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※この連載は「青少年劇場通信」78号(2006年10月発行)から続けているものです。
今年度の「下伊那地区高等学校合同芸術鑑賞会」は「修学旅行」を鑑賞した。
事後指導として実施している感想文では、多くの生徒が、感動、共感、満足、楽しい、といった文言を書いていた。最初、何が言いたいのか、あの大きなゴーヤの存在と共に判らないと思っていた生徒も、パワフルな動きにぐいぐい引き込まれ、圧倒され、そして、しっかりとメッセージを受け取ったようだ。「明日があるよ、自分も頑張ろう」と。
長野県の最南部に位置する飯田市、及び下伊那郡の県立高校8校は、飯田市文化会館を会場に合同芸術鑑賞を行っています。現在は6月第1週に6〜8ステージで実施していますが、1990年代までは、春は演劇、秋は音楽鑑賞と年2回実施していました。
当初は「長野県高等学校視聴覚教育研究会」に加盟する飯田市内の高校だけで実施していましたが、文化会館建設を機に、1972年(昭和47年)から、公演会場を各校の体育館から文化会館に移し、その後間もなく他の高校も加盟し現在の形態になりました。体育館で鑑賞していた頃は大変な状況でした。暗幕で窓を塞いだ中は蒸し暑く、雨が降れば屋根をたたく雨音で台詞が聞こえないといった有様、また、劇団の皆さんも開演の前に電気の配線をしたり、会場の準備も大変でした。(ヒューズが飛んで停電になった事も!あれは「真夏の夜の夢」でしたか?)今は良い環境で生徒も集中して鑑賞することができます。
しかし、文化会館を使用するまで準備は大変でした。全職員の理解を得られるか、会館使用料、離れた高校の移動手段や交通費はどうするか、学校から出て行事をやることの不安等々、短期間に何度も担当者で議論を重ね実施にこぎつけました。(会館使用料は、飯田市が趣旨を理解して下さり、後援という形で減免措置がとられました。)
その後、県教委から補助金が出るようになり、生徒の負担も軽減され、単独で実施していた定時制も加わることができました。定時制の夜間公演には保護者、家族の皆さん、演劇や音楽の好きな地域の皆さんにも鑑賞していただいています。残念ながら、この補助金も毎年減額されてきており、特に、定時制の補助金については来年度からカットする旨の通知がありました。他県では、授業日数の確保や補助金のカット等で学校行事、とりわけ芸術鑑賞が費用や手間を考えて中止になったという事も聞きます。
この地域の合同鑑賞もそんな事が議論されるような時期が来るかもしれません。しかし、それはかなり先の事になるでしょう。何故ならこの鑑賞会は多くの職員が関わり運営して来たことにより、その教育効果を充分認識しているからです。一年毎に持ち回りになる事務局校、各校の担当者も、他の校努との関係からたまたま係りになってしまった、という場合も多々ありますが、下見に出かけたり、劇団等の方のお話を伺ったりしながら自分達で創り上げている事、芸術に触れることの重要性を実感します。そうして、自分達が選択した演目は一〜二年後に鑑賞することになりますが、その年の鑑賞会はやはり想い入れが違うでしょう。「同じ地域に学ぶ全ての高校生に、同じ芸術を良い環境で触れさせたい」という思いで始まった合同鑑賞会も、今の形態になって40年になりました。これからも多くの職員が関わり、知恵を出し合って素晴らしい芸術鑑賞の機会を創っていくことでしょう。