愛川欽也(俳優・司会者) (※2000年の全国巡演の際にご寄稿いただいたものです。) |
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劇場を出て夜の街を歩きながら、何故あんなに涙が出たのかを考えました。急いで家に帰って 本棚から「日本国憲法」を出しました。しばらく読んだ事がなかったが読んでみると、あらためてこの憲法のすばらしさに感動しました。「平和」と「平等」を何よりも大切に作られた、この憲法のもつ優しさをジェームス三木さんの「真珠の首飾り」は訴えているのです。その感動が舞台から私たちに、伝わってくるのです。憲法を読んだことのない人も「前文」だけでも読むことをすすめます。 この憲法を変な日本語だとか、理想主義的すぎて無理であるとか、アメリカが作ったものだから日本にとっては不利で、外国にとって都合のいいものだから、日本人によって作り変えるべき等という考えがあります。 「真珠の首飾り」は、憲法の草案はアメリカの人たちが作ったという出来事を真剣にみせています。そして、何故そうなったかを教えてくれるのです。 終戦になって日本は、明治に作られた大日本帝国憲法をつくりかえることになります。それは、大日本帝国憲法が持つ独裁的、軍国的な中身をやめて、新しい民主主義の日本を作るために必要だったのです。そして、その時、アメリカは最初に日本の国会議員や、有識者たちにまかせて、新憲法の草案を作らせていたのです。「真珠の首飾り」の中に出てきますが、その人たちの作った草案の中身が、大日本帝国憲法とまるで変わらず、これでは戦争の反省も何もないと思い、25名の駐留アメリカ民政局の日本通の人たちによって、新しい日本国憲法の草案が作られていったのです。 僕はこの人たちが作った新憲法の草案の前に、アメリカが破棄した帝国憲法とたいして変わらなかったという憲法の草案を、見てみたいという気がします。又、もしその草案を、そのまま憲法にしていたら、日本がどんな国になっていたか、と思ったりします。 世界の憲法を勉強したわけではないので、他の国についてはくわしくありませんが、日本国憲法は、全て、人間にとっての理想を語っています。それは、世界中の国にも通用する理想です。 戦時中子供だった僕が戦後、中学生時代に担任の岡田降吉先生に、この憲法を教えて貰ってから今日迄、僕は、この憲法は日本が世界に誇る財産だと思っています。 ジェームス三木さんの「真珠の首飾り」をみて、すばらしいものは誰が作ろうが、すばらしいものなんだという考えをあらためて思ったのでした。 |
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★「今、憲法を考える」講師:伊藤真さん (弁護士/伊藤塾塾長/日弁連憲法問題対策本部副本部長) |
スライドと資料をもとに、憲法の持つ基本理念、そもそも憲法は 何を規定しているのか、「立憲主義」とはなにか等の基礎からお話 していただきました。
明治憲法から日本国憲法へ…。「臣民」から「国民」となった私たちは、人権や権利、国の在り方についてはっきりと主張できるよ うになりました。しかし私たち自身がまだその認識を持てていない という指摘も。あのヒトラーを生み出したのは圧倒的な大衆支持であるという事実に触れながら、ヒトラーの政治戦略「…肯定か否定か、愛か憎しみか、正か不正か、真か偽りか。…大衆に確信させるために…何千回も繰り返すこと」を紹介。さらに側近のゲーリング元帥が言った「…国民にむかって、われわれは攻撃されかかっているのだと煽り、平和主義者に対しては国を危険に曝していると非難すればよい」という、聞き覚えのあるような言葉に、思わず会場からうなり声が…。そして、現在論議になっている「安全保障関連法案」の矛盾と問題点、行使された場合私たちの生活がどのように変化するかなど、具体的に示して下さいました。アジアとの関係や世界的視野に立って平和を構築するということ、さらに戦後の歴史認識がどうあるべきか、同じ敗戦国であるドイツが行っている歴史教育などを比較しながら、憲法を通して日本の未来を考える機会となりました。伊藤先生は普段から学生を相手に講義されているだけあって分かりやすく、時折交えるユーモアにしばしば爆笑させられる劇団員たちでした。 |
★友の会 夏のつどい~憲法を語ろう~ |
今年の友の会のつどいは「憲法」をテーマに開催しました。◁まずは会員と劇団員による日本国憲法の群読。耳で聞く憲法は、読むのとはまた違った発見が! ▷続いては、三人の若手弁護士によるリレートーク。 日頃担当されている案件――公共施設における「表現 の自由」、過重労働と「生存権」、福島の原発避難者と 「人権」――などを事例に、私たちの生活で憲法がど う活きるのか、分かりやすい切り口で語っていただき ました。その後会場から出た「法律違反は罰せられる のに、なぜ憲法違反は罰せられないのか」 という質問に、「法律は国民が守るものですが、憲法は国(権力) が守るべきもの。その違反に対し罰するのは国民。私 たちは憲法違反には大きな声を上げていくことが大切」との答え。憲法は私たちの生活の基盤であり、そうでなくなった場合は堂々と声を上げていくこと、そこにこそ憲法の意義があるのだと痛感しました。 ◁お待ちかねの楽しい歓談の合間には、広戸聡と片平貴緑による 「安全保障関連法案」についてのコント。「日本の危機事情」を説明しようとするオジサンに女子高生がすかさず突っ込むという構図に、会場は笑いに包まれました。最後は『真珠の首飾り』 出演者の紹介。演出の板倉哲は、今この作品を上演することの重さと大きな意義を感じてると語り、ぜひ多くの方にご覧いただきたいと挨拶しまし た。 |
地域公演のある大田・亀有をはじめ、劇団員が居住地を中心に、それぞれの地域でたくさんの方々と交流し、平和や憲法のことなどを学習しながら公演成功に向けて奮闘しています。 お近くで劇団員を見かけた方はお気軽にお声かけください。 |
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初演時(1998年)に来日されたベアテ・シロタ・ゴードンさんには、その後の全国巡演に際しても惜しみないご協力をいただき、『真珠の首飾り』のプレ企画として各地で講演会も催しました。ベアテさんの憲法への強い思いと懐の深い優しさが、広範な人々を結びつけ、この作品の上演活動を支えてくださいました。 |
初演時のカーテンコールにて。ジェームス三木氏(舞台中央)とベアテ・シロタ・ゴードンさん(右から四番目) |
ベアテさんのウエルカム・パーティーにて |