≪創立50周年記念・第6弾≫第113回公演「真珠の首飾り」製作ニュース

 『真珠の首飾り』はジェームス三木氏の脚本・演出で1998年に初演、以降毎年のように再演を重ね、2005年まで合わせて109回の公演を行いました。戦後70年の今年、劇団創立50周年記念公演として、演出を劇団の板倉哲が引き継ぎ、キャストも新たに上演いたします。
 現在「日米安保関連法案」の国会審議が続いておりますが、今回は日程が国会閉会間近に当たるという極めて緊迫した状況下での公演となります。集団的自衛権の行使に向かうこの法案は、海外派兵、武力行使についての判断基準が極めて曖昧との批判が多くあがっています。その最中に沖縄で墜落した米軍ヘリには、自衛隊の特殊部隊が同乗、訓練中であったと報じられました。アメリカの議会で首相が今夏までの法案成立を約束してから国会に上程するという立法府軽視も含め、この国の独立主権そのものを疑問視する声も高まっています。それだけに「押し付け憲法」とも言われる「日本国憲法」が、どのような経緯で生まれ、当時の人々のどんな思いが込められているのかを知ることは、今だからこそ大切ことと言えるでしょう。
 1946年2月4日、焼け野原の皇居前に残された第一生命ビル。その一室にGHQ(連合軍総司令部)民政局のメンバーが緊急招集されます。そこで下された命令は「日本国の憲法草案を作成すること」で、期限はわずか一週間。ただちに名の民政局員が、立法、人権、天皇、行政などの各委員会に振り分けられ、突貫作業がスタートします。兵士として前線に送られていた弁護士、占領対策でアメリカ本土から呼ばれた学者、戦前に滞日経験を持つ者など、様々なメンバーが日本に民主主義を根付かせることを軍隊命令として憲法草案に取り組んだのです。当然トップシークレットで、真相はその後50年を経るまで当事者から語られることはありませんでした。
 『真珠の首飾り』は、その密室での議論によってGHQによる憲法草案が作られ、その後の日本政府との激しいやりとりを経て、日本政府案として公表されるまでの怒涛のような一ヶ月間を描きます。日本国憲法の基調となっている国民主権、基本的人権の尊重、戦争放棄をどのように考えるべきか。当時の日本政府は何を考えていたのか。敗戦後の日本人にそれはどう受け取られたのか…。 終戦直後、わずかな瞬間に奇跡のように生みだされた日本国憲法。そこに込められた思いを共有し、私たちの未来を考えあえればと思います。ぜひお誘い合わせの上、ご来場くださいますようお願い申し上げる次第です。






愛川欽也(俳優・司会者)
(※2000年の全国巡演の際にご寄稿いただいたものです。)
僕は青年劇場公演ジェームス三木作・演出の「真珠の首飾り」 を観終わってから、劇場の廊下を歩いて楽屋のほうへ向かいました。ドアを開けるとジェームス三木さんが立っていました 。
 僕は涙が止まりませんでした。「いい芝居をありがとう」と言ったと思います。
劇場を出て夜の街を歩きながら、何故あんなに涙が出たのかを考えました。急いで家に帰って 本棚から「日本国憲法」を出しました。しばらく読んだ事がなかったが読んでみると、あらためてこの憲法のすばらしさに感動しました。「平和」と「平等」を何よりも大切に作られた、この憲法のもつ優しさをジェームス三木さんの「真珠の首飾り」は訴えているのです。その感動が舞台から私たちに、伝わってくるのです。憲法を読んだことのない人も「前文」だけでも読むことをすすめます。
 この憲法を変な日本語だとか、理想主義的すぎて無理であるとか、アメリカが作ったものだから日本にとっては不利で、外国にとって都合のいいものだから、日本人によって作り変えるべき等という考えがあります。  「真珠の首飾り」は、憲法の草案はアメリカの人たちが作ったという出来事を真剣にみせています。そして、何故そうなったかを教えてくれるのです。
 終戦になって日本は、明治に作られた大日本帝国憲法をつくりかえることになります。それは、大日本帝国憲法が持つ独裁的、軍国的な中身をやめて、新しい民主主義の日本を作るために必要だったのです。そして、その時、アメリカは最初に日本の国会議員や、有識者たちにまかせて、新憲法の草案を作らせていたのです。「真珠の首飾り」の中に出てきますが、その人たちの作った草案の中身が、大日本帝国憲法とまるで変わらず、これでは戦争の反省も何もないと思い、25名の駐留アメリカ民政局の日本通の人たちによって、新しい日本国憲法の草案が作られていったのです。
 僕はこの人たちが作った新憲法の草案の前に、アメリカが破棄した帝国憲法とたいして変わらなかったという憲法の草案を、見てみたいという気がします。又、もしその草案を、そのまま憲法にしていたら、日本がどんな国になっていたか、と思ったりします。  世界の憲法を勉強したわけではないので、他の国についてはくわしくありませんが、日本国憲法は、全て、人間にとっての理想を語っています。それは、世界中の国にも通用する理想です。
 戦時中子供だった僕が戦後、中学生時代に担任の岡田降吉先生に、この憲法を教えて貰ってから今日迄、僕は、この憲法は日本が世界に誇る財産だと思っています。
 ジェームス三木さんの「真珠の首飾り」をみて、すばらしいものは誰が作ろうが、すばらしいものなんだという考えをあらためて思ったのでした。

                          
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「真珠の首飾り」公演成功に向けて
~さまざまな取り組みが進んでいます~


★「今、憲法を考える」講師:伊藤真さん

          (弁護士/伊藤塾塾長/日弁連憲法問題対策本部副本部長)
スライドと資料をもとに、憲法の持つ基本理念、そもそも憲法は 何を規定しているのか、「立憲主義」とはなにか等の基礎からお話 していただきました。
 明治憲法から日本国憲法へ…。「臣民」から「国民」となった私たちは、人権や権利、国の在り方についてはっきりと主張できるよ うになりました。しかし私たち自身がまだその認識を持てていない という指摘も。あのヒトラーを生み出したのは圧倒的な大衆支持であるという事実に触れながら、ヒトラーの政治戦略「…肯定か否定か、愛か憎しみか、正か不正か、真か偽りか。…大衆に確信させるために…何千回も繰り返すこと」を紹介。さらに側近のゲーリング元帥が言った「…国民にむかって、われわれは攻撃されかかっているのだと煽り、平和主義者に対しては国を危険に曝していると非難すればよい」という、聞き覚えのあるような言葉に、思わず会場からうなり声が…。そして、現在論議になっている「安全保障関連法案」の矛盾と問題点、行使された場合私たちの生活がどのように変化するかなど、具体的に示して下さいました。アジアとの関係や世界的視野に立って平和を構築するということ、さらに戦後の歴史認識がどうあるべきか、同じ敗戦国であるドイツが行っている歴史教育などを比較しながら、憲法を通して日本の未来を考える機会となりました。伊藤先生は普段から学生を相手に講義されているだけあって分かりやすく、時折交えるユーモアにしばしば爆笑させられる劇団員たちでした。



★友の会 夏のつどい~憲法を語ろう~

 
今年の友の会のつどいは「憲法」をテーマに開催しました。◁まずは会員と劇団員による日本国憲法の群読。耳で聞く憲法は、読むのとはまた違った発見が!

  
▷続いては、三人の若手弁護士によるリレートーク。 日頃担当されている案件――公共施設における「表現 の自由」、過重労働と「生存権」、福島の原発避難者と 「人権」――などを事例に、私たちの生活で憲法がど う活きるのか、分かりやすい切り口で語っていただき ました。その後会場から出た「法律違反は罰せられる のに、なぜ憲法違反は罰せられないのか」 という質問に、「法律は国民が守るものですが、憲法は国(権力) が守るべきもの。その違反に対し罰するのは国民。私 たちは憲法違反には大きな声を上げていくことが大切」との答え。憲法は私たちの生活の基盤であり、そうでなくなった場合は堂々と声を上げていくこと、そこにこそ憲法の意義があるのだと痛感しました。
 ◁お待ちかねの楽しい歓談の合間には、広戸聡と片平貴緑による 「安全保障関連法案」についてのコント。「日本の危機事情」を説明しようとするオジサンに女子高生がすかさず突っ込むという構図に、会場は笑いに包まれました。最後は『真珠の首飾り』 出演者の紹介。演出の板倉哲は、今この作品を上演することの重さと大きな意義を感じてると語り、ぜひ多くの方にご覧いただきたいと挨拶しまし た。



地域公演のある大田・亀有をはじめ、劇団員が居住地を中心に、それぞれの地域でたくさんの方々と交流し、平和や憲法のことなどを学習しながら公演成功に向けて奮闘しています。
お近くで劇団員を見かけた方はお気軽にお声かけください


  • 埼玉のつどい ~for真珠の首飾り~
    埼玉地域では夏のつどいを計画。俳優たちと一緒に『真珠の首飾り』の台本読み合わせや、憲法をテーマにしたコント、そして美味しい手打ち蕎麦で乾杯!の予定で準備中。楽しく憲法に触れながら『真珠の首飾り』の上演を通して、この輪をもっともっと広げていきたいと思います!

  • むさしの ~地域の人々とともに~
    地域で行っている「教科書カフェ」に参加。“教科書採択問題”について学習、子ども達に歴史をどう伝えていくのか…重要な問題だと実感。『真珠の首飾り』も紹介させていただきました。

  • 新宿 ~平和を願う取り組みの中で~
    「新宿平和のための戦争展」実行委員会に参加。三月の実施に向けて、講演や映像など、どのような内容にするか検討しています。プレ企画として『真珠の首飾り』を観劇していただける事になりました!

  • 「南部地域上演実行委員会」誕生!/9月24日大田区民プラザ
    大田公演成功に向けて実行委員会が結成されました。その名も「南部地域上演実行委員会」。大田だけでなく近隣区などにも呼び掛けていこうとこの名称になりました。国会では安全保障関連法案をめぐって大詰めを迎える時期の公演。なんとしても会場を満杯にしようと、チケットを預かって周りの方に広めたり、劇団員と一緒に地域を宣伝に回ったりしてくださっています。チラシの配布、ポスターの掲示だけでも結構です。活動をお手伝いしてくださる方、大募集中。劇団製作部にお問合せください!

  • 東部のつどい/9月25日かめありリリオホール上演成功に向けて!
    久しぶりの亀有公演となります。プレ企画として8月29日に青年劇場創立メンバーである小竹伊津子を囲み、平和について考えるつどいを催します。空襲・戦争体験を経て女優の道を選んだ小竹が、自身の半生と平和、憲法への思いを語ります。劇団員による朗読や小話も準備中。楽しくまじめに語り合いながら、「真珠の首飾り」の上演成功へ弾みをつけたいと思います。お近くに在住の方、ぜひご協力を宜しくお願い致します。




初演時(1998年)に来日されたベアテ・シロタ・ゴードンさんには、その後の全国巡演に際しても惜しみないご協力をいただき、『真珠の首飾り』のプレ企画として各地で講演会も催しました。ベアテさんの憲法への強い思いと懐の深い優しさが、広範な人々を結びつけ、この作品の上演活動を支えてくださいました。

初演時のカーテンコールにて。ジェームス三木氏(舞台中央)とベアテ・シロタ・ゴードンさん(右から四番目)











ベアテさんのウエルカム・パーティーにて

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