第二十回

「市内小・中学校合同演劇鑑賞教室」


公益財団法人会津若松文化振興財団(會津風雅堂)  主査 山宮 勇

 当財団が管理運営を受託している福島県会津若松市の文化施設である會津風雅堂では、演劇公演やクラシック音楽演奏会、住民参加型演劇公演やダンス・演劇の体験講座等、多種多様な主催事業を年間十数件開催しています。主催事業を実施するにあたって心掛けているのは、「地方では鑑賞する機会の少ない舞台公演を低価格で提供すること」「公演別に主たる鑑賞者の年齢層を意識し、それぞれの世代にあった各種公演をバランス良く実施すること」です。その一環として、平成6年の開館当初から中学2年生を対象にした合同芸術鑑賞教室を継続して実施しており、平成26年からは小学5年生を対象にした合同芸術鑑賞教室も始めました。

 芸術鑑賞教室は、人生で最も多感な時期・人格形成期にあたる学生に優れた舞台作品を鑑賞していただく事で、生活に潤いをもたらす舞台芸術の素晴らしさを感じてもらい、心豊かな人間の育成に寄与する事を目的に開催しています。同じ学年の児童・生徒が一堂に会し、舞台作品を鑑賞しながら同じ場面で笑い・泣き、会場一体となる感覚等、舞台ならではの醍醐味を感じていただけるよう、興味関心をもって感情移入できる作品を選定する事はもちろんですが、鑑賞前後に学校でも話し合いの場を設け、より深い鑑賞をしてもらうように事前学習資料を作成したり、担当される先生方に協力していただけるよう、信頼関係の構築も心掛けています。

 さて、当館で実施している自主事業のアンケートによれば、ファミリー向け事業などの例外はありますが、来場者の約8割が50代以上、という傾向があります。少子高齢化の時代にあって、30年後も同じ来場者数を確保するためにも、芸術鑑賞教室は大切であると考えています。ホールで舞台作品を鑑賞した事が無い人が、一定年齢に達しただけで舞台作品を鑑賞するようになるでしょうか。公共ホールでこころ動かされる経験をした人が未来の鑑賞者になるのだと思っています。

 昨年5月に発表された「文化芸術の振興に関する基本的な方針(第4次基本方針)」には、重点戦略のひとつとして、子供や若者を対象とした文化芸術振興策の充実が掲げられております。次代を担う学生たちが、芸術文化に触れながら成長できる環境の整備は、学生たちの感性や創造性を豊かに育み、文化芸術を継承発展させていくために不可欠です。明るい未来のために、公共ホールによる芸術鑑賞教室実施の必要性を強く感じています。

(2016年7月)

※執筆者の冒頭の肩書は、当時のままになっています。 現在の肩書が分かる方は、文章末尾に表記しています。



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