昨夏、スタジオ結(YUI)にて上演された「博士の愛した数式」は公演終了後、多くの感動の声が寄せられました。80分しか記憶が持たない数学博士とシングルマザーの家政婦、そしてその息子。孤独と寂しさを抱えたそれぞれが出会い、"数学"を通して交流していく中で、次第に互いの存在の大切さや自分自身を見つめ直していく物語は、格差や貧困、いじめといった殺伐とした現代社会に生きる私たちに、人間が本来もつ優しさや繋がりを再確認させてくれます。「どんなにありふれた出会いの中にも変化の奇跡はある、ということを伝えたい」と語る脚本・演出の福山啓子にとってこの作品が本格的なデビュー作となりました。
昨年末には、福井県越前市にて一般公演を行い、そして今秋からはいよいよ全国巡演が始まります。これからどんな出会いが待っているのか楽しみです。
【初演のアンケートより】
●皆さんとても良かったです。特に、息子役の蒔田さんはどう見ても小学生の男の子でした……。映画も見よう、見ようと思いつつ、いまだ見れず、数多くのお芝居や映画、演劇を見ている母は「映画よりも良かったかも!」と申してました。隣人の吉田さんもいかにもいそうで世話好きで人の良い感じ。お母さんもだんだんと子どもと心が通う内に顔が変わってきて……。博士も優しく、数字が苦手な私もこんな先生に出会ってたら……と思いました。夫人は最後に心を開いてくれて良かったです。人を愛するという事は本当に重いものだナァと思いました。自分だったらどこまで出来るか……考えていきたいと思います。
(女性・30代)
●知人に誘われ公演を観させていただきました。もうとうの昔に子育ては終っておりますが、お芝居の中での母親の役割(愛情)に涙しました。自分は母親として子どもにどのようにかかわってきたのだろうと―。出演の皆様とっても良い役者さんと思います。家に帰ってこのお芝居をもう一度ふり返ってみたいと思います。ありがとうございました。
(女性・60代)
●ラストシーン、人は消えても、ちゃんとその生の影響がつながっていくのだと思うと心が暖かくなり、感動しました。
(女性・40代)
●観劇の3日前に新潮文庫を読んで、悲しくもあるが、とっても暖かくいい小説で、舞台化したいという意欲も素晴らしいことと思いました。ただ、一年間の春から秋まで、それに一日単位の出来事を舞台ではどのように展開されるかという思いはありました。小説にない同じ家政婦の隣の女、吉田さんを登場させることによって、女の気持ちをナレーションに頼らず、また、舞台を楽しくさせたことは脚色の大ヒットでした。……博士とシングルマザーとその息子の心暖まる交流、数字―数学の美しさを通して「愛」を表現した気持ちのいい舞台でした。スタジオ結の第一回公演として、とてもいい作品で、観終った後もいい気分でした。小劇場向けの作品として、地方に出ることをお考えになってはと思います。有難うございました。
(男性・70代)