「修学旅行」を見て
浦崎浩實(劇評・映画批評家)
(前略)
舞台の天井から大きなゴーヤが一つ、ぶら下がっている。(略)南国の自然をたっぷり注入され、いかにも美味といった風情の輝かしいこのゴーヤは、別の時空からの"使者"ともなりえよう(乘峯雅寛・美術)。
青森の高校から四泊五日で沖縄にやってきた修学旅行生たち。その日のスケジュールを消化し、日報を綴っている班長(伊藤めぐみ)に男子生徒(矢野貴大)が頼みごとをしている。好きな女生徒がいて、自分と同じ思いかどうか探ってほしい、と。
そこへ同室の女生徒四人や旅館の女将(亀井幸代)と番頭が騒々しく入ってきて、男子生徒は退散。女将がおどけ気味に、皆さんのお陰で飢え死にせずにすみました、と言う。イラク戦争のあおりで、沖縄への修学旅行が激減していたのだ。
でも、沖縄が攻撃されることはないんでしょ?と女生徒が無邪気に質問すると、それはありません、米軍機が落ちてくることはありますけど、と女将。さらに、地雷はあるんですか?と尋ねられ、いえそれもありません、不発弾はたまに出てきます、第二次大戦の時のものですが!
なかなかのブラック・ユーモアで、この後も、班長がこの日の見学の感想をみんなに質すと、水族館のジンベエザメが大きかった、米軍基地も(同じく)大きかった、と単純化されたり、見回りにきた引率の教師(細渕文雄ら)もその日の感想を尋ねると、生徒会長のノミヤ(大山秋)が即座に手を上げ、「わたし、ひめゆり平和祈念資料館で泣いちゃいました」と声を詰まらせながら言う。彼女はつい今しがた、平和学習はウザッたい、修学旅行は授業じゃないのに、と気炎を上げていたから同室の者は呆気に取られ、教師は真に受けて大感激する一幕もある。
一時間四十分ほどの長さだが、実は本作のメインは恋の告白に絡めたラブコメディー。後半の意表をつく展開に客席は爆笑続きである。
(後略)
(琉球新報より転載)
観劇後のアンケートより
○ 久しぶりに笑いに笑いました。高校生になりきっていて、とても楽しそうにやっていましたね。旅館のおばさん役の人や、ソフト部のカキザキさんなど、とても上手でした。さすがに今の高校生のことをよく知っている人が書いた脚本だと思います。高校生が大勢見に来ていて、青年劇場のこれからが楽しみです。これからもこういった作品をぜひ多く作って下さい。
(関口暁子・60代)
○ すっごく面白かったです。次どうなる次どうなるとハラハラしました。最後の結末はびっくり物でしたし…。けど、2人は失恋しちゃってかわいそうだなって思います。性格直してからきやがれって感じもするけど。こんな何げないことで、分かりやすく、しかもなんか心に引っかかる感じで戦争を伝えるってすごいと思いました。いろんな種類の戦いがあって、イラクとか今の戦争の話とか、第二次世界大戦のリアルな話とか、「世界のまん中で1人ぼっち」はヒカルさんの台詞だけど、ノミヤさんもそうだと思うし、日本も戦争してた時あんなだったよなぁ、て思ったりしました。
(畠山純子・高校生)
○ 戦争と平和の話をこのレベル(どっちが上とか下はわからないケド)までもっていけるなんてすごいです。もう、ほとんど笑いっぱなしでした。よく考えてみると、戦争って、こんな笑っちゃうくらいくだらないことなのかもしれない。でもこんなくだらないことで、大勢の人が命を落としているのかと思うと、それは、ぜんぜん笑えないことなのだと思いました。また、青年劇場の公演、観に行きたいなぁと思いました。観にこれて本当によかったです。ありがとうございました。
(宇野真弓・学生)