夏の特別企画連続公演終了


 7月14日から18日まで、全労済ホール/スペース・ゼロで夏の特別企画連続公演として「修学旅行」(畑澤聖悟=作、藤井ごう=演出)「3150万秒と、少し」(ラルフ・ブラウン=原案、藤井清美=作・演出)の2作品を上演いたしました。両作品とも東京初演以来全国の高等学校・中学校での公演を続けてきており、久々に東京のお客様に見ていただく事ができました。今回は公演成功のために若いサポーターの皆さんにお力添えいただき、公演当日は若い熱気があふれる会場になりました。公演後、「全国にこの作品を届けてください」「青少年劇場運動を続けてください」との励ましが劇団に送られてきています。アンケートの一部と、「修学旅行」を東京初演に引き続きご覧いただいた平田先生の感想をご紹介させていただきます。


太るゴーヤの実
筑波大学附属駒場中・高等学校教諭  平田知之


「修学旅行」の舞台 (撮影:蔵原輝人)

 『修学旅行』は周知のとおり高校演劇の全国大会で優勝した作品です。いくら巧者揃いの青年劇場でも、いやむしろ巧みさが邪魔になって、高校生の生々しい感じが消えてしまうのではないかと、人ごとながら余計な心配をしながら去年、紀伊國屋ホールで初演を拝見しました。トシ子さんやアキラ先生など劇団の役者層の厚みが生かされた青年劇場テイストの作品に仕上がっていて、高校演劇とは別の魅力を感じました。その一方で、カキザキのキャラにしろ、枕投げのストップモーションにしろ、そこまできっちり作り込まなければ舞台は成り立たないのかと、青森中央高校の高校生の力の抜け具合が思い出されるところもありました。  ところが、スペース・ゼロの再演は、初演の第一印象とまったく違う感じがしました。といっても、台本や演出が大きく変わったわけではなさそうです。ただ初演のように完成度の高さが前面に出るのではなく、客席の空気をも呼吸するような、ノリのよい柔らかい芝居に変わっていたのです。  この変化の秘密が学校公演にあることは間違いありません。今、学校も多様化の道を突き進み、新しいタイプの学校が激増中です。修学旅行も定番の観光旅行から、より体験的、獲得型のフィールドワークへと進化しています。各地の上演ではさまざまな予想外の反応があったことと思います。地道に座談会などを繰り返しながら、多様な生徒の声を拾ってきたのでしょう。カキザキは各地で圧倒的な支持を得て、更にパワーアップしたと聞きます。こうしたプロセスは高校演劇ではありえない話で、学校公演を行う劇団ならではです。そういえば中央に吊られているゴーヤも心なしか太ったようです。  秋にはついに沖縄で『修学旅行』が行われるそうです。出来事を記憶している土地で、戦争体験者から直接話を聞いている高校生の前で演じられることで、きっとさらにゴーヤは大きく太り、笑いだけでなく苦みを増してくることでしょう。  東京での再々演が楽しみです。

アンケートより


「3150万秒と、少し」の舞台(撮影:宮内勝)

●まず舞台が始まる前に会場に若い子(学生)がいるのにびっくりしました。今までいろんな芝居を見てますが初めてかもしれません。「修学旅行」だから学生?と思いました。とても面白かったです。戦争=修学旅行は変ですが、そのものだと思いました。生徒一人一人が国であり意見が違えばもめる、話し合いがずれると大問題になる。それはやっぱり戦争ですね。それも場所が沖縄……。親子でわかりやすく平和の素晴らしさがわかりました。最後に日本が出た時はなぜか「涙」が出ました。
(栄めぐみ 40代)

●大変面白い作品でした。見に来て良かったと思います。以前に「翼をください」も見ましたが、同じぐらい良い作品でした。「3150万秒と、少し」は生きるという事の大切さを考えさせてくれる作品だと思います。未成年の犯罪が増加している現代、「生きる」ことの大切さを教えてくれるこのような作品はとても貴重なのではないでしょうか。今の中高生は目標や夢を持たない子が多いようです。毎日をつまらなくすごしている子の多くは目標や夢を持たないのだと思います。「生きる」=「何かに向かって進むこと」だと思います。手探りでもいいと思います。一日一日を大切に生きること、このことを今の中高生によく考えてほしいと思います。今後も公演の方、頑張って下さい。
(土田浩平 20代)