菅井幸雄
(すがいゆきお)
菅井幸雄先生が去る九月二十日にお亡くなりになった。先生はよく「私は外部的内部の人間」とおっしゃっていた。劇団外の方だが、演劇運動の志を同じくする「同志」であった。
先生は今日の社会状況・演劇状況を説き、その中で青年劇場の果たすべき役割を語り、そのために劇団員夫々が、それを遂行しうる力をつける努力をと励まして下さった。
創立間もないころ、初めて一つのコースとして「労演公演」が実現したのは一九六九年の「真夏の夜の夢」による九州労演の公演だった。菅井先生は「労演運動」に深い関わりを持たれた方で、労演側から最も信頼されていた実践的評論家であった。先生は粘り強く、土方与志直伝のシェイクスピア解釈、高校公演の実績、その反響、成果などについて、大いに売り込んでくださった。それを力に私はその後、すべての単位労演を巡り、秋田雨雀・土方与志記念の意味を含めて、劇団の生い立ちを語り、土方直伝の「真夏」を語るという旅をしたのだ。そして九州労演のコースが実現したのである。とにかく、「初めに菅井先生ありき」、菅井先生なくしては実現しなかった公演であった事は間違いない。
あとで、さる有力劇団の製作者の方が私に「青年劇場は確実に、少なくとも五年近くは発展のテンポを速めたね」と言ってくれた。
菅井先生、いろいろと長年にわたり有難うございました。先生のお志をついで、劇団員一同、力を合わせて頑張りたいと思います。
どうぞ安らかにお休みください。合掌。