菅井幸雄先生、長い間、いろいろとありがとうございました。


菅井幸雄
(すがいゆきお)

演劇評論家。東京都出身。1951年、明治大学文学部演劇専修卒業。54年に明治大学助手になり、教授、文学部長などを歴任、現在名誉教授。木下順二氏に師事。日本の新劇史を中心に研究を進め、「小山内薫演劇論全集」5巻を編集。「リアリズム演劇論」「変革期の演劇」「近代日本演劇論争史」など著書多数。「演劇創造の系譜」で河竹賞受賞。9月20日、前立腺がんのため逝去。享年84歳。

瓜生 正美(青年劇場顧問)

 菅井幸雄先生が去る九月二十日にお亡くなりになった。先生はよく「私は外部的内部の人間」とおっしゃっていた。劇団外の方だが、演劇運動の志を同じくする「同志」であった。

 先生は今日の社会状況・演劇状況を説き、その中で青年劇場の果たすべき役割を語り、そのために劇団員夫々が、それを遂行しうる力をつける努力をと励まして下さった。

 創立間もないころ、初めて一つのコースとして「労演公演」が実現したのは一九六九年の「真夏の夜の夢」による九州労演の公演だった。菅井先生は「労演運動」に深い関わりを持たれた方で、労演側から最も信頼されていた実践的評論家であった。先生は粘り強く、土方与志直伝のシェイクスピア解釈、高校公演の実績、その反響、成果などについて、大いに売り込んでくださった。それを力に私はその後、すべての単位労演を巡り、秋田雨雀・土方与志記念の意味を含めて、劇団の生い立ちを語り、土方直伝の「真夏」を語るという旅をしたのだ。そして九州労演のコースが実現したのである。とにかく、「初めに菅井先生ありき」、菅井先生なくしては実現しなかった公演であった事は間違いない。

 あとで、さる有力劇団の製作者の方が私に「青年劇場は確実に、少なくとも五年近くは発展のテンポを速めたね」と言ってくれた。

 菅井先生、いろいろと長年にわたり有難うございました。先生のお志をついで、劇団員一同、力を合わせて頑張りたいと思います。

 どうぞ安らかにお休みください。合掌。