現在私が参加している「修学旅行」の学校公演では、着席している生徒ほとんどがマスク姿というこれまで経験したことのない光景が連日続いています。全国に蔓延している新型インフルエンザの影響です。さらにこれは学校閉鎖、学年閉鎖によって演劇鑑賞教室そのものにも多大な影響を与えています。(社)日本劇団協議会傘下の劇団でも、すでに二十校を超える学校が延期あるいは中止になったという報告が寄せられていて、それが劇団経営を直撃しているのです。学校公演を中心とする劇団にとっては、劇団の存続そのものを揺るがす危機的状況とも言われています。各劇団とも学校と補償について協議を行っていますが、学校側にその用意があるわけでもなく、具体的な救済策がないというのが現状なのです。その根源となっているのは、鑑賞教室に対する予算措置が、行政として保障されていないというところにあります。しかし、学校の休校措置などは各自治体の行政判断として行われるものであり、その判断によって生まれた行事中止などの補償については、行政からの一定の措置を期待したいと思います。
と同時に、学校における芸術鑑賞の位置づけを、文化芸術振興基本法に基づいて、国や自治体として行っていく事の必要性を痛感しています。現状では、芸術鑑賞の実施は各学校に委ねられ、今回のような問題が生まれてくると、学校側も行事計画に慎重になることも考えられます。しかし、青少年の芸術鑑賞という視点から見ると、子ども劇場などの鑑賞団体の公演も減少し、演劇を上演している地域が限られ、入場料金設定も決して低廉ではなく、誰しもが鑑賞できる条件ではありません。すべての青少年が鑑賞するという意味では、学校での芸術鑑賞の実施の意義は、ますます大きくなっているのです。もっとも多感な年頃である青少年が、豊かな芸術を鑑賞することの意義と必要性を大きな世論にしていくことが大切だと思っています。