2010年2月12日(金)〜23日(火)
青年劇場スタジオ結(YUI)
12月10日(木)
発売開始!!


秋田雨雀のヒューマニズムと
土方与志のダイナミズムを受け継いで
代表 福島明夫

 今年、青年劇場は創立45周年を迎えました。その掉尾(とうび)を飾る公演として、来年二月に特別企画「先駆けるもの―秋田雨雀 人と作品/三年寝太郎」を行います。

 劇団名に冠した土方与志先生が亡くなられたのが1959年です。その没後50年にあたり、土方先生が晩年に劇団前進座で演出された「三年寝太郎」を、その演出プランを基本にしながら、当時演出助手だった津上忠さんにお願いし、上演することとしました。また同時に秋田雨雀先生の書かれた詩や小説をもとにしながら、福山啓子が構成し、堀口始の演出で、朗読を併演することとした次第です。

 青年劇場は創立以来、一貫して青少年のための演劇活動を行ってきましたが、その基本理念は、未来を担う子どもたち、青少年にこそ優れた舞台を鑑賞する機会を作ること、そして後継者を育成していくことという、両先生が戦後もっとも力を入れた活動を受け継ぎ、発展させたいという思いにあります。今日、学校公演を始めとする青少年に向けた演劇公演活動は非常に困難な状況を迎えていますが、私たち自身が劇団の原点を再確認することで、その困難に向き合っていきたいとも思っています。

 スタジオ結という小空間ではありますが、秋田雨雀先生のヒューマニズムに触れる場とし、また土方与志先生のダイナミズムに溢れた演出の片鱗が伝わるような舞台を作り上げたいと念じております。二月の寒い時期ではありますが、劇団員一同、劇場でお目にかかれるのを楽しみにお待ちしております。



「秋田雨雀・土方与志記念」の
意味するものと由来について
青年劇場顧問 瓜生正美


秋田雨雀先生

 秋田雨雀・土方与志記念青年劇場は、1964年2月16日、劇団舞芸座の分裂に際して退団した8名の再結集によって創立されました。


土方与志先生

 創立メンバーは森三平太、西沢由郎、小竹伊津子、朝倉喜久雄、中津川衛、伊東潤二、矢沢邦江、瓜生正美で、後藤陽吉、土方与平はいろいろな事情で少し遅れての参加でした。

 創立を逆のぼること4年前の1960年の安保の闘いのあと、安保の闘いを挫折と考えるアンチ新劇の流れが生まれ、舞芸座の中にも、舞芸座の代表者であり指導者であった秋田雨雀、土方与志両先生の没後、新劇運動と舞芸座の進歩的伝統を歪め、「日本の民主的変革に向けて演劇の分野で力を尽す」という両先生の教えに背く動きがあらわれました。


第1回公演「真夏の夜の夢」
シェイクスピア=作 瓜生正美=演出
1964年5月1日市ヶ谷商業高校公演で活動をスタートさせた青年劇場ですが、それから遅れること3年、1967年9月に第1回めの東京公演を行いました。

 舞芸座の分裂の要因はそこにあったし、8名の仲間の退団は、その動きに対する反対の意志表示であり、再結集、そして青年劇場の創立は、その意志表示が具体化されたものです。

 さてその8名は、残念ながら連携してではなく、個々バラバラに辞めていきました。それだけ傷が大きかったともいえます。瓜生も他の7人より一足早く、事実上、劇団活動から離れていました。

 この事態に対して舞芸座の多くの後援者の方々から批判をうけ、又、舞芸座を本来の姿に於て再建することが求められました。土方梅子、秋田いく、土方玄味、伊達たまきに代表される方々からでした。然し、再結集への道は、困難を極めました。夫々がバラバラに、夫々の思いで辞めていったのですから…。


第26回公演「青春の砦」
大谷直人=原作 瓜生正美=脚本・演出
1980年9月初演。1987年までの8年間で747回の全国公演を重ね、劇団の代表作の一つとなりました。

 両先生の没後、舞芸座に入団し代表となっていた私は、贖罪の思いで皆の説得に動き回りました。一人一人の家を訪ね歩いて自らの非を詫びお願いをしたのでした。数ヶ月がすぎ、やっと再結集のため一堂に会してからも「劇団名」をめぐって論争となりました。私は舞芸座の事実上の再建の意味で「舞芸座」又は「新舞芸座」と提案したのですが全く受け入れられず、何回かの会合を重ね「青年劇場」で合意が成立しました。高校公演―青年劇場運動とも言われた―で出発しようとしていたのですから、割とすんなりと決まりました。皆もホッとし、やれやれやっと、という顔付でした。そこで私が提案したのです。「せめて、秋田雨雀・土方与志記念を劇団名につけ加えようよ」と。そして決まったのです。

 後につづく皆さん、この困難を極めた経緯をしっかりと受け止め、今や「秋田・土方記念」の言葉がいっそう重要な意味をもってきている演劇界の現状の中で、私たちの生活しているこの日本の、矛盾に満ちた現実をしっかりと直視し、人間が人間らしく生きていける世の中をどうしたら創っていけるか、お客さんと一緒に考える芝居「秋田・土方の芝居づくりの道」をしっかりと守り抜いてほしいと切に望むものです。


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