「臨界幻想」(ふじたあさや=作 千田是也=演出)の初演から35年、3・11を経て「臨界幻想2011」(ふじたあさや=作・演出)に生まれ変わり、初めてこの作品が演劇鑑賞会の例会として巡演しています。各地で新しい出逢いを重ねながら、首都圏、そして、長野県ブロックへと続きます。出演者の島本真治に想いを綴ってもらいました。
演劇鑑賞会との出会いから想うこと
島本 真治(俳優)
「臨界幻想2011」 中央が筆者 (撮影:V-WAVE)
5月16日「臨界幻想2011」がスタートしたが、首都圏ブロックでは例会に先駆けて、作品について語る会が開かれ、私も何ヵ所かに伺わせてもらった。まず、敢えて「原発」という、現在問題になっているテーマの作品を選んで頂いた事への感謝を述べた。他劇団は笑いも交えながらであるが、この作品についてそれは出来る術も無く、どうしても場の空気が変わってしまう。だが、俳優として舞台から感じるそのままを伝えることで、今観なければ、やらなければならない芝居であるということを交感できたのではないかと思う。
質問コーナーで収入について聞かれた参加6劇団のうち俳優は2名で、私は「例えば公演で万雷の拍手を頂いても、翌朝にはアルバイトでモップを握っているんですよ」と生活実態を申し上げると、皆さん絶句!冗談交じりに「私を生かすも殺すも皆さん次第ですよ」とお願いした。
鑑賞会とは運動体だということ、創造団体は作品に責任があり、共に例会を創り上げていくことを、50年以上の劇団の歴史の中で教えられてきた。鑑賞会にとって、青年劇場も同様の存在でありたいし、同時に劇団も俳優も魅力的な存在でなければならないと、改めて思った。
筆者 ちば演劇を見る会にて
公演の方は原発事故から5年経ち、初演当時感じた恐怖と憤りの思いを、如何に絶やさず持ち続けられるかが自分の中でも課題となっている。又、各地の鑑賞会の皆さんの、この作品とどう向き合うのか、という真剣で真摯な活動を見聞きするにつけ、公演班も刺激されながら旅の中日を終えようとしている。
そしてこの作品を通して個人的に思うのは、熊本地震から二ヶ月が経とうとしているが、あれだけ揺れを受けても、自分の老いた母や姉兄家族が熊本に暮らし続けられているのは、そこに原発が無いからだ、それは痛切に感じている。あれ程の事故を経験したのに再稼働?私たちにできることは何だろう?少しでもその思いを共有出来るよう、これからもこの作品の舞台に立ち続けたいと思う。出来れば全国(の鑑賞会)で!
★2018年頭で巡演を計画中です。ぜひお問合せください。