時代の転換期に  代表 福島明夫



第104回公演「普天間」チラシに使用している写真
「普天間第二小学校の運動会練習」1982年・宜野湾市
撮影:大城弘明/1950年、沖縄県三和村福地(現糸満市)生まれ。琉球大学入学後、復帰闘争、全軍労運動、米軍基地、沖縄戦の跡などを撮影。卒業後、沖縄タイムス写真部に入社。現在、同部嘱託。

 今回の東日本大震災で被災された方々、またその関係者の皆様に心よりお見舞い申し上げます。

 3月11日、青年劇場は『青ひげ先生の聴診器』の上演期間中でした。幸い昼間の公演はありませんでしたが、それ以降の4ステージを上演中止とせざるをえませんでした。ご覧いただけなかったお客様には大変申し訳なく、また残念に思っております。直後には、劇団活動や団員の身を案じ、全国各地からご心配や励ましのご連絡を頂戴しました。本当にありがたく、勇気づけられました。心より感謝申し上げます。その後、『族譜』東京再演を“復興支援公演”と位置づけ、売上の一部を義援金として送り、会場にて募金を呼びかけました。ご来場いただいた皆様、募金にご協力いただいた皆様、本当にありがとうございました。

 6月から東北地方にて『結の風らぷそでぃ』実行委員会公演、『キュリー×キュリー』の学校公演が始まっています。中止もやむをえない、と覚悟をしていましたが、現地の皆様から「こんな時だからこそ演劇を」という強い要望の声をいただきました。微力ですが、私たちの上演で少しでも心の灯をともせたら、と願っています。 しかしながら、震災から三ヶ月以上が過ぎた現在でも救援の手はとても十分とはいえない状態にあります。特に福島原発事故による放射能被害は深刻な広がりを見せており、その実態もいまだに全容がつかめないままです。私たちはこの大地震がもたらした甚大な被害と明らかにされた様々な出来事を受けとめ、進むべき社会のありようを考え直す岐路に立たされているのではないでしょうか。原発推進一辺倒の流れから脱原発の可能性が探られ始めていますし、より根源的には人間の生き方が問い直されていると言っていいでしょう。

 さて、劇団の新作公演は坂手洋二さんの書き下ろしによる『普天間』です。坂手さんには以前から“いつか共同作業を”とお願いしていたのですが、昨年の「普天間基地の辺野古移転」の日米合意が一つのきっかけとなって、沖縄の現実をもう一度伝えたいと、今回ようやくの実現となりました。自分たちが生活していた土地が接収されて基地になり、爆音や事故、事件……絶えず緊迫した状態にいる日常。六十年以上続いてきた非人間的な生活と現実に対し、「基地がなければ経済が成り立たない沖縄」と言われ続けて来た人々。それは原発が密集した福島、福井をどこか思い起こさせます。舞台を通して、この国の構造的な問題と社会のありように迫ってみたいと思います。

 社会全体がそうであるように、劇団も経済的には厳しい環境に置かれています。けれども新しい時代を自ら切り開く気概を持たなければ、人の心を打つ創造を生み出す事はできません。これからも一つ一つの公演に丁寧に、真摯に向き合ってまいります。 今後とも皆様のお力添え、ご協力を心よりお願い申し上げます。