「もっと文化を!」署名
(社)日本芸能実演家団体協議会会長 野村 萬


街頭で協力を訴える野村会長

 昨年、文化芸術立国の実現を掲げ、文化関連予算の大幅な増額などを求める国会請願署名活動を、全国的に繰り広げました。おかげさまで、60万筆を超える署名を戴く事が出来、去る12月2日、150名の芸能関係者が、81名の国会議員に請願の国会提出と文化政策の充実についてお願いに上がりました。

 「請願」は、1月開催の通常国会に提出され、当該委員会等での審議が行われることになりますが、請願内容の実現のためには、引き続き、国会ならびに各方面への強力な働きかけが必要であります。

 芸団協は、60万余の署名を確りと受け止め、このことに全身全霊を傾注する覚悟でございます。今後の動静を見守り、かつ更なるお力添えを賜りたく、紙面をお借りして御願い申し上げます。

 先ごろ逝去された土方与平さんには、芸団協役員として永年御貢献を戴きました。昨年、芸団協は創設四五周年を迎えましたが、土方さんが研究し、紹介され続けて下さったフランス等の文化政策のあり方に、芸団協は多くのことを学ばせて戴いた歴史があり、この度の請願内容にも実を結んでいると存じております。

 青年劇場との更なるご縁を感じるのは、1948年秋田雨雀先生を初代学長に迎え創立した舞台芸術学院に、はからずも私が第六代学長として重責を担う御選任を戴いたことであります。

 雨雀先生は「学院清記」をしたため、建学の主張をなされています。そこには、芸術そのものの価値とイデオロギーを分ける事で、時代による芸術家不遇の懸念を払拭しようとした決意が伺えます。と同時に、その時々の人間を基とした芸術には当然、社会的思想が介在する事も、当時の先生は感じていらっしゃったのではないでしょうか。

 学院創立60年を経て、芸術と社会との関係は急速に変化しております。芸術から見た社会と、社会から見た芸術の落差を埋めるために、教育機関として芸術と社会の架け橋になることも、先生の掲げた「清記」に基づく使命の一つだと考えます。

 先生が礎を築かれた舞台芸術学院も、本年、卒業生諸兄姉による「60周年記念公演」を開催致します。その「秋田雨雀」の名を冠した青年劇場が創立50年に向かう中、先生と稽古場を共に過ごした時代から、次の世代へと創作の現場は移りつつあると伺っております。

 「未来はその次の世代によって創られる」、改めて雨雀先生の携わってこられた歴史の一端に触れる時、この事以外に記すべき言葉はみあたらないのです。

 国会へは、「実演芸術拠点を充実させるための法整備」「新たな助成制度」そして「鑑賞機会の拡充」を併せて請願致しました。

 演劇をはじめとする我が国の文化芸術の振興が国の諸政策の柱となり、それにより心豊かなる社会作りが実現できるよう、今後も皆様と心を合わせ、着実に歩を進めて参りますので、なお一層の御力添えを賜りますよう、重ねて御願い申し上げます。