東京から全国へ、緊急上演!
「臨界幻想2011」 ふじたあさや=作・演出

 昨年5月5日、「臨界幻想2011」東京公演を前に、国内で稼働する原発はゼロになりました。しかし一年も経たずして再稼働、さらに新設まで言われるに及んでいます。劇団は昨年から各地に上演運動を呼びかけ、2月の東京再演を皮切りに全国12か所での緊急上演が取り組まれることになりました。32年前には原発立地予定地を含む24か所で、「臨界幻想」の全国公演が行われましたが、今回も各地実行委員会の皆さんにより準備が進められています。最西端、山口県周南市から思いを寄せていただきました。


「周南公演実現に向けて」
「臨界幻想2011」を観る会in周南・実行委員長 池田真由美


撮影:宮内勝
 2011年3月11日の東京電力福島第一原発の事故から、まもなく2年の月日が経とうとしています。
 ドイツでは遠い日本で起きた福島の事故を見て、すぐに政府と国民が一体となって「10年以内に原発ゼロ」という政策を選択しました。
 一方、日本では再び原発も必要という政府が誕生し、事故の本当の収束は後回しとなり、経済優先へ向かっています。
 30余年前、ふじたあさや作『臨界幻想』(‘81初演)によって、原発労働者の過酷な実態を暴き、原発技術の稚拙さからいつか必ず放射能漏れの事故が起こると警告されていたのですが、残念ながら<安全神話>に押しつぶされる形で、この間日本中に54基もの原発の乱立を許してきました。
 図らずも事故を予知する形になってしまった『臨界幻想』。「原発事故を止めることができなかった演劇の力のむなしさを感じた。」と劇団の方々が無力感や葛藤に苛まれたと聞きました。同時に「しかし、我々にできることは演劇の力を信じること。『臨界幻想』をもう一度。」と再演へ踏み切られたいきさつもお聞きし、胸を熱くしました。

実行委員のみなさん
 昨年5月、福島第一原発事故の現実が加筆されて生まれ変わった『臨界幻想2011』がいよいよ東京で上演されるという情報をいただき、周南市民劇場事務局長の海田さんと私が、たまたま1日違いで東京での再演の舞台を観に行ったことからことは始まります。二人とも衝撃を受け、これは是非山口県で公演を実現させたい!しよう!という思いで一致。その日のうちに劇団の方に「山口で上演します」と宣言していました。帰郷後、その熱い想いで仲間に呼びかけたことから私たち実行委員会は生れます。保守王国と呼ばれる山口県ですが、30年以上に亘り上関原発の立地に体を張って阻止してこられた祝島の方々を始め、県内には数々の団体が福島第一原発事故以前より脱原発の運動を展開しています。『臨界幻想2011』公演実行委員会をきっかけに、組織を超えて結集できたことも大きな喜びです。
 10月には劇団代表の福島明夫氏、12月には「負げねど飯舘村」安齋徹氏を囲む会と交流会を公演会場となる周南市市民館にて催し、制作者側の想いや福島での現状に触れ、周南公演への意欲を高めました。
 原発事故への人々の関心が急速に薄れているのを感じます。それは、昨年末の衆院選の結果にも大きく表れてしまいました。1月中旬現在、上関原発建設埋め立て延長申請も未だ却下の判断はなく、むしろ改めて検討するような時間かせぎにもみえる県知事の返答。こうしている間も内部被ばく、自主避難者の不安は募るばかりです。だからこそ、この山口県で公演を成功させる意義があるのだと私たちは思っています。
 当日は劇団の皆さまとスタッフと観客が一体となって〈福島で起ったことは何だったのか〉を、言葉によって社会を考えるにふさわしい「舞台」を通じて、今一度見つめたいと思います。そして、この実行委員会をきっかけに広がった繋がりを強くしこれからの運動の展開の力にしていくためにも、必ず成功させます!

「臨界幻想2011」上演日程


2月14日(木)14:00/19:00 俳優座劇場(東京再演)
  15日(金)14:00 俳優座劇場(東京再演)
  17日(日)14:30 越前市文化センター(福井県)
  20日(水)14:30 三島市民文化会館(静岡県)
  21日(木)14:30 浜松市浜北文化会館(静岡県)
  22日(金)18:45 菊川文化会館アエル(静岡県)
  24日(日)15:00 周南市市民館(山口県)
  25日(月)19:00 岡山市民会館
  27日(水)18:30 神奈川県立青少年センター
3月 2日(土)15:00 藤沢市民会館(神奈川県)
   3日(日)14:30 八王子芸術文化会館いちょうホール(東京都)
   6日(水)14:00/18:15 郡山市民文化センター(福島県)
   7日(木)18:30 仙台市民会館(宮城県)
   9日(土)15:00 秋田県民会館

ご観劇とともに、公演成功にむけてご協力ください。
お申込・お問い合わせは 青年劇場製作部まで