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創立以来高校演劇と深く関わってきた青年劇場ですが、毎年様ざまな講師派遣要請にもこたえてきました。私も、宮城県高校演劇協議会からの委嘱で、3年前から関わらせていただいています。
そこへ昨年の東日本大震災。夏のリーダー講習会で生徒たちと過ごしたユースホステルは津波にのまれ、沿岸部では生徒も先生も被災しました。後に無事を確認できたのですが、一緒に講師を務めた若い劇団員がメールアドレスを交換した生徒のうち一人だけ安否確認ができないと、数ヶ月間サイトを検索し続けていました。
ライフラインの復旧後、理事の毛利先生に連絡した時には「まだ被災状況が把握できず、高校演劇協議会の当面の活動は見合わせざるを得ない状況です」と話されていました。
ところが、昨年11月、なんと沿岸地域を含むすべての地区大会を経て県大会が開催され、会場は若い熱気に包まれ見事に成功をおさめたのです。大会を運営する生徒たちを笑顔で支える先生たちが印象的でした。被災を乗り越えた「演劇を作る力」とは…毛利先生にご寄稿をお願いしました。
葛西和雄(俳優)
「地区大会の会場がない…」未曾有の天災に遭遇し、津波で校舎が使えなくなった学校や、自宅や家族を失った生徒たちもおり、とても活動が出来るような状態ではなかった宮城県の高校演劇が直面した次なる課題であった。幸い、前年のうちに決定していた県大会の会場である大河原町の「えずこホール」は被害が少なく、震災後まもなく使用が再開された。「県大会」が出来るのであれば「地区大会」は高校の体育館を使用してでも何とかしてというのが各校の顧問の総意であった。案の定、会場探しは難航し、仙台地区の大会が計画通り実施できると判明したのは10月の地区大会が目の前に迫った9月頃、会場下見もないままの実施となった。
コンクールで舞台に立つのはほとんどの学校で1・2年生の生徒である。本協議会では例年、夏休みに「リーダー研修会」と「総合研修会」を実施して劇作りを基礎から学んでいる。この二つの行事が中止になった今年度は、学習の機会がないままコンクールが最初の行事となってしまった。しかし、生徒たちは先輩から受け継いだ知識をもとに皆で協力して舞台を作り上げた。コンクールで演じられた各高校の劇は例年と変わることのない素晴らしいものであった。中でも県大会で最優秀賞に輝いた宮城広瀬高校が演じた「蛍」という劇は、長崎で被爆した家族の葛藤をテーマにしたものであり、震災があった年にあえてそのテーマに取り組んだ生徒達のひたむきさが光った。演劇は「無」から「有」を作り出す素晴らしい活動である。自然の猛威が一瞬にして全てを無にしてしまった惨状を目の当たりにした生徒たちだからこそ、皆で力を合わせて創作活動に打ち込み、観客との一体感を味わうことに大きな意義があったのではないだろうか。「演劇」という創作活動は、創る者と観る者の双方に勇気と感動を与えることができる素晴らしいものだということを強く感じた。
来る3月23日〜25日、仙台市広瀬文化センターで「第6回春季全国高等学校演劇研究大会」が開催される。ブロック大会1位の学校が夏の全国大会に出場するのに対し、ブロック2位の学校が集う大会である。宮城県が開催地に立候補したのは震災前だったが、来年の3月は福島県、再来年の3月は岩手県が開催地に名乗りを上げている。被災三県が高校演劇にエールを送り、高校演劇から元気をもらいたいと考えているのである。
全国の演劇ファンの皆様に宮城に足を運んでいただき“演劇の力”を実感していただければ幸いである。