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待ちに待った福山啓子さんの第二作である。第一作の「博士の愛した数式」は、数字の美しさがきら星の如くちりばめられ、セットはコンパクトだったが、イメージとしてのスケールは非常に大きい傑作だった。原作がいいからと言った人を軽蔑する。あの原作からあの舞台を生み出したのは劇作家のセンスに他ならない。その証拠に、映画はほとんど評判にならなかったでしょう。
かつて飯沢匡先生は、劇団は劇作家と言う堅牢な壁に守られていれば大丈夫だと、ジェームス三木さんと小生を紹介して逝かれた。だからぼくとしては二人が頑張ってる間に、次の世代が現れてくれることを心待ちにしていた。そして出現したのが彼女である。メチャ嬉しくてラブレターを書いた。青年劇場とつきあって二十余年になるけれど、劇団内から劇作家が生まれたのは初めてである。その意味で、彼女は青年劇場の宝と言っても過言ではないと思うんだが、扱いが少々ぞんざいな感じがする。「博士」の初演が2007年だからもう五年もたっている。作・演出の兼務ということもあるかも知れないが、ちょっと長すぎやしないだろうか?作家は焼けた鉄、熱い旬を逸したら元も子もなくなる。だから福山さんには毎年とは言わないけれど、せめて二年に一度くらいの機会を与えてあげて、劇団総ぐるみで育てる、ぐらいの気概があってもいいんじゃないだろうか。
さて第二作は、野球部員が演劇の舞台に立つという、意表を衝いた物語である。福山さんの特徴は、軽快な台詞運びと女性作家には数少ないユーモアの精神があふれていることだろう。台本を読ませてもらったが、今回も、その特徴は十分に活かされている。そして若々しい。二児のお子さんを育てられた実感が投影されているのだろう。高校生たちが生き生きと動くさまが目に浮かぶ。これから一ヶ月の稽古を経て、どんなダイナミックな舞台を見せてもらえるか、大いに期待している。