青年劇場全国後援会

 青年劇場は全国各地で実行委員会公演を行っていますが、その際全国後援会の皆様のお力添えもいただいています。昨年の「あの夏の絵」埼玉公演では太田政男代表幹事が実行委員長、新幹事の木村浩則氏が副実行委員長を担ってくださいました。同じく実行委員として活躍してくださった新幹事の本田宏さんに寄稿して頂きました。

考える人を増やしたい

本田 宏
(青年劇場全国後援会幹事 NPO法人医療制度研究会副理事長)


 36年間の外科医生活にピリオドを打ち、医療と社会保障の崩壊阻止を目的に、講演や市民活動に力を注いできましたが、今回は「あの夏の絵」12月1日埼玉公演の実行委員に後援会新幹事として参加させて頂きました。
 「青年劇場」との出会いは、東日本大震災7日前の「青ひげ先生の聴診器」でした。とある地方の病院で日々悩み、患者のために精一杯頑張る医師や看護師、そこには日本の医療現場の実態がリアルに、笑いとペーソスを交えながら生き生きと映し出されていました。
 長年医療費や医師抑制策による医療現場の過酷な労働実態などを新聞やテレビ、講演活動等を通して訴えてきましたが、経済最優先の政府は抜本的な医療や社会保障改善に舵を切ることはありません。
 最近経済学者の波頭亮氏の2011年11月18日『「成長論」から「分配論」を巡る2つの危機感 自力で生活できない人を政府が助ける必要はない!?』という論考で、日本は「自力で生活できない人を政府が助けてあげる必要はない」と考える人が38%で世界最多であることを知って愕然としました。自由を重んじ何事も自己責任と考えるアメリカは第二位ですが、日本より10%も少ない28%なのです。日本では他人の苦しみを自分のこととして想像できる人が少なくなっているのです。
 勤務医時代には演劇を観る精神的余裕は殆どありませんでした。しかし「青ひげ先生の聴診器」以来、「郡上の立百姓」、「梅子とよっちゃん」、「アトリエ」…、そして「あの夏の絵」と青年劇場の作品に触れる度に、時代を超えて目の前で展開される数多くの人々の生き様に出会い、今までの自分の人生では経験できなかった慶びや哀しみを追体験できて、毎回心が揺さぶられる思いをしています。
人が他人に優しくなるためには、他人の心に寄り添って考える想像力が不可欠です。演劇を通して社会の問題をあぶり出す「青年劇場」の活動を広げて、考える国民が一人でも多くなることを期待しています