昨年の九月公演では、戦後パリを舞台にしたフランス現代戯曲の秀作「アトリエ」を上演、久しぶりに翻訳劇をお届けしました。鋭い告発劇でありながら、エネルギッシュでユーモアに富んだ舞台に感動の声が多く寄せられました。
※舞台写真(左より 傍島ひとみ 江原朱美 藤井美恵子 高安美子 崎山直子)(撮影=V-WAVE)
*日常の中に色濃く残る戦争(特にユダヤ人問題)のテーマは、我々の日常と通じるものがあります。多くのバカバカしさの中に歴史の傷痕と無縁ではないという、ごく当たり前のことに感じ入りました。
(河邉彰男さん・54歳)
*戦争が終わってすぐの人々の生活がささやかながら、ものすごく重い意味をもって描かれていた。些細な会話の中に、戦争の残した傷跡や個人の苦しい記憶が含まれていて、一つ一つの言葉を聞き逃すまいと終始集中してしまった。笑いもたくさんあってよかった。
(20代・女性)
*フランス人、フランス系ユダヤ人、ドイツ系ユダヤ人、ドイツ人、アメリカ人…本当はもっと複雑な人種構成の差別、戦時下でおこったホロコーストなどの出来事が会話の中で浮かびあがり、苦しみが、矛盾が明らかになっていく。現在の日本では、原発事故被害者などの犠牲者がいつまでも苦しみ補償出来ていない現実や、戦時下での日本軍が中国や朝鮮他で行った殺戮や差別、現在のヘイトスピーチなど…。でも明るく力強く生きていく人々、未来をつくる子どもたちに希望を見出していける、そんなことを観て考えました。
(大越宏樹さん・59歳)
*終戦直後という時代設定とはいえ、藤井ごうさんも書かれているように、あの“おフランスはパリ”が舞台、もう少しエチケットのあるおしゃべりなのかなと予想していたのですが、始まったら、挨拶しない、ズケズケ言い合う、笑う、怒る、賑やかなこと。悪口雑言の時もあるが冷たさはなく同僚意識にあふれていて温かい。会話の中から生活や政治の不安、愚痴、希望も見えてきて会話劇の面白さに引き込まれました。藤井さんがパンフレットに書かれていた「エレーヌ・ベールの日記」の抜粋を読み、今の時代を思いドキリ、です。藤井演出のファンになりました。
(山本嘉子さん・76歳)